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Ep.2 地理のイディオム

この記事はショートストーリーと日本語解説の2部構成です。

Episode.2  Three Years Older

10-year-old Jack and his older sister Nancy found themselves trapped in a room with a monitor, where the quizzes appear. Seemingly, they have to answer them using their knowledge, intelligence and vocabulary.

In-the-Room-Ep.2-1

Nancy: “Any idea, Jack the wise?”

Jack: “It’s ‘tip of the iceberg.’ I’ve heard that before!”

In-the-Room-Ep.2-2

“And I know you’re jealous of my cleverness, but—”

“I’m not familiar with the phrase, but may I ask what it means?”

“—top of a glacier?”

In-the-Room-Ep.2-3

“These are just misleading options.”

“Hey, you knew that phrase! You’re so malicious!”

“I’m not malicious, and it’s obvious I know more than you because I’m older.”

“Just three years!”

“…Four years, actually.”

In-the-Room-Ep.2-4

“I think ‘neck’ or ‘king’ would go in the first blank, and the rest in the second blank.”

“Does ‘king’ make sense? The sentence should mean ‘this neighborhood,’ but both ‘king of the hill’ and ‘king of the woods’ seem to mean a particular person or an animal.’”

In-the-Room-Ep.2-5

“Then, the first blank is ‘neck.’ ‘Neck of the hill’ or ‘neck of the woods’— Wait, do they have a neck?”

“Of course not.”

In-the-Room-Ep.2-6

“This neck means something else, something narrow, I guess.”

“Let me think… ‘Narrow forest’ could be more like that than ‘narrow hill.’”

“I agree.”

In-the-Room-Ep.2-7

“Yesss!”

“Phew! I hope there are no quizzes anymore.”

In-the-Room-Ep.2-8
“NO WAY.”

【解説?】地理のイディオム

地理的要素のあるイディオムを訊かれたら、皆さんはいくつ答えられますでしょうか。よく出てくるのは、beat around the bush、can’t see the forest for the trees、drop in the ocean あたりですかね。

日本語から考えることもできます。例えば「氷山の一角」は tip of the iceberg です。ちゃんとした記録が見つからないので断言はできませんが、日英で語源は同じものだと思われます。日本に氷山はないですから。

こうやって世界中でイディオムが輸出入されていれば、表現が増えるのも当然です。全世界共通で理解できる真っ当なフレーズならまだいいのですが、中には意味不明な暗号も存在します。誰にも解読できない分、暗号よりタチが悪いかもしれません。書きかけのダイイングメッセージと同レベルです。

その語源を調べていくと、誰かの言い間違えや聞き間違えであることが非常に多いです。誤解の原因はきつい方言や訛りだろうと推察しますが、それにしても間違えすぎです。スコットランド人を経由したのでしょうか。

というわけで増えに増えたイディオムをまとめてみました。地理(地形)に関連するものは、ざっと調べただけでも27個あります。多すぎです。

【リスト】地理関連のイディオム

1. 森林・茂み

2. 山・丘陵・荒野

3. 海洋

4. 河川・沼・池

5. 地球

ここまでで27個です。全てにコメントすると腱鞘炎を起こしそうなので、個人的に気になった9つだけピックアップして、残りは最後に日本語訳をつけることにします。

取り上げるイディオム

  1. neck of the woods
  2. out in the sticks
  3. make a mountain out of a molehill
  4. live under a rock
  5. between the devil and the deep blue sea
  6. across the pond
  7. set the Thames on fire
  8. too busy fighting alligators to drain the swamp
  9. salt of the earth

1. neck of the woods

森林に囲まれた地域を表すこともありますが、主な意味は「近隣」「地域」です。neighborhood や district あたりが適当な訳でしょう。

元々、イギリスで neck は「(水辺で挟まれた)細い土地」を指すこともあったようです。これはまだ納得できますが、なぜかアメリカ人は「水辺」を「森」に、「細い」を「小さい」に置き換えたようです。まあ、肥満体の彼らの首は細くはありませんからね。

2. out in the sticks

木の枝(stick)くらいしかない「ど田舎」や「僻地」を意味します。葉や幹がないということは、砂漠に枝だけが一本落ちているような状態でしょうか。あ、複数形なので何本かありますね。いや、in ということは枝に囲まれてしまうのでしょう。砂漠で。

3. make a mountain out of a molehill

意味は「ささいなことを誇張して大げさにする」。

直訳だと「モグラ塚で山を作る」です。田舎の土の中で動き回る彼らを我々現代人が覗く機会はありませんが、モグラが築き上げたちっぽけな文明の跡を嘲ることはできます。実際のモグラ塚はこんな感じらしいです。

In-the-Room-Ep.2-9-Molehill
By william craig, CC BY-SA 2.0

これを山にするには、人類文明の利器であるビッグライトが必須でしょう。バイバインで増やして積み上げる作戦もいいかもしれません。ガリバートンネルで自分が小さくなる案は却下です。奴らの異形な口に吸われたくないので。

4. live under a rock

岩の下に住んでいるので情報が入らない、すなわち「世間の動きに疎い」という意味です。

しかし、たとえ外界と閉ざされた地域の先住民でも、岩の下はおろか、上で暮らすことすらないはずです。むしろ岩を神聖視して登ろうとしない、登らせようともしないのが普通ではないでしょうか。アボリジニのように。

5. between the devil and the deep blue sea

直訳すると「悪魔と深く青い海の間」です。日本語の「前門の虎、後門の狼」にあたります。
同義語に between a rock and a hard place というのもあるようです。

個人的には虎や狼の方が恐ろしく感じます。まあ悪魔は同じくらいかもしれませんが、海は泳げれば怖くないはずです。足がつかない深さなら、どれだけ深くなろうと関係ありません。まして色なんて、青くない方が不気味です。

このイディオムの発祥は17世紀なので、考案者が貴族である可能性は高そうです。きっと海を見たことがないカナヅチの坊っちゃまだったのでしょう。

6. across the pond

大西洋を渡って」です。特に英米間で使われることが多いようです。

飛行機がある現代では簡単に大西洋を渡ることができますが、大昔はそうではなかったはずです。ピルグリム・ファーザーズが死人を伴う長い航海を経てようやく渡りきった大洋です。それを「池」呼ばわりしている英米人は、自分たちの偉大な祖先を侮辱していることに気づかないのでしょうか。

7. set the Thames on fire

「テムズ川に火をつける」。転じて「世間を驚かせる」です。

そもそも川を燃やすことは不可能です。水は燃えません。元々は Thames(テムズ川) ではなく temse(ふるい:料理で使うアレ) だったという説もありますが、どちらにしても燃えません。小学生でもわかります。イギリスでは理科を習わないのでしょうか。

8. too busy fighting alligators to drain the swamp

「アリゲーターと戦うのに忙しくて沼を空にできない」

目的外のことに気を取られすぎることを表します。「木を見て森を見ず」と似ていますね。

日本にアリゲーターはいないので、日本人にも馴染みやすいように言い換えてみましょう。

「部屋に侵入したアシナガバチを倒すのに忙しくて巣を撤去できない」

「服を選ぶのに時間をかけすぎて待ち合わせに遅れる」

「勉強のための環境構築に気を取られて勉強できない」

実感が沸いたのではないでしょうか。

9. salt of the earth

正直で信頼できる人」を意味します。聖書の一節から取られているらしいです。

日本人的には、塩のようにしょっぱい人というと大抵「そっけない」「冷淡」「けち」をイメージするのではないでしょうか。塩をなめて “You’re so honest!” と叫んでいるのだとしたら、欧米人の味覚は異常です。医者がいくらいても足りません。

と思ったら、米語の salty には「イライラして不機嫌な」という意味もあるらしいです。欧州人と比べると、まだましな味覚をお持ちのようですね。ただし、イラチは信用に値しません。

まとめ

いかがでしょうか。このレベルになると日常使いする・したいと思う日本人はいないと思うので、あくまで読み物として流していただければ充分でしょう。

一応まとめとして、27個全ての訳を載せておきます。

【日本語訳】地理関連のイディオム

1. 森林・茂み

2. 山・丘陵・荒野

3. 海洋

4. 河川・沼・池

5. 地球

今回は毒を吐きすぎたような気がします。実際には欧米人をリスペクトしていることと、筆者は京都人でもイギリス人でもないということだけ、最後にお伝えしておきます。

著者Twitterはこちら↓

参考Webサイト

Grammarphobia “Neck of the woods”
(
https://www.grammarphobia.com/blog/2012/02/neck-of-the-woods.html)

Wordhistories.net “The Authentic Origin of ‘Between the Devil and the Deep Blue Sea’”
(
https://wordhistories.net/2017/09/29/between-devil-and-sea/)

Worldwidewords.org “Salt of the earth”
(
https://www.worldwidewords.org/qa/qa-sal2.htm)

Cambridge Dictionary (https://dictionary.cambridge.org/)

Collins Dictionary (https://www.collinsdictionary.com/)

Longman Dictionary of Contemporary English (https://www.ldoceonline.com/)

The Free Dictionary (https://idioms.thefreedictionary.com/)

Oxford Learner’s Dictionaries (https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/)

Wikitionary (https://en.wiktionary.org/)

Online Etymology Dictionary (https://www.etymonline.com/)

Vocabulary.com (https://www.vocabulary.com/)

Grammarist.com (https://grammarist.com/)

英辞郎 on the Web (https://eow.alc.co.jp/)

Weblio英和辞典 (https://ejje.weblio.jp/)

Wikipedia (https://en.wikipedia.org/)

HiNative (https://hinative.com/)

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