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Ep.5「仕上げ」の英語表現

この記事はショートストーリーと日本語解説の2部構成です。

Episode.5   A French Wannabe

10-year-old Jack and his older sister Nancy found themselves trapped in a room with a monitor, where the quizzes appear. Seemingly, they have to answer them using their knowledge, intelligence and vocabulary.

In-the-Room-Ep.5-1

Jack: “I think that means ‘make situations better’.”

Nancy: “Don’t forget that the situations are already good.”

In-the-Room-Ep.5-2

Give me the terms like ‘finishing touch’.

Let me think… ‘the knockout punch,’ ‘the last straw’…

Don’t make the situation worse.

In-the-Room-Ep.5-3

How about ‘coup de grâce,’ or ‘pièce de résistance’?

When did you become French?

In-the-Room-Ep.5-4

I think ‘the cherry on top’ is close enough.

Cherries are on the… cake! ‘Cake’ is definitely the second one! What’s on the cake…?

Icing!

In-the-Room-Ep.5-5

……

Is there anything wrong?

… I just remembered something. Something before we came here.

In-the-Room-Ep.5-6

We were at home, with mom and dad. And there was a cake on the table, which says…

Says what?

…‘Happy Birthday Jack’

Wait, so you’re saying it was—

Yeah. It was my birthday night.

In-the-Room-Ep.6-1

【解説】「仕上げ」の英語表現

「仕上げる」を英訳するなら、finish や complete を使うのが普通でしょう。add a finishing touch のようなこなれたフレーズを使える語学マスターは、きっと「画竜点睛」「花を添える」のような日本語の慣用句も言い慣れているに違いありません。

ところで「花を添える」に「美しいものをさらに華やかにする」という意味があること自体は、おそらくほとんどの日本人が知っているはずです。一方で、この洒落た成句を日常使いできる人の数は、リストの「ラ・カンパネラ」を弾ける人口と同じくらい少ないのではないでしょうか。「ねこふんじゃった」も満足に弾けない大多数の人はおそらく、「マジでヤバい」を多用していることでしょう。私もその一人です。

私のようなスラングしか使えなくなった人間にも、慣用句や四字熟語を口からスラスラと出せる教養人に憧れを抱く人は多くいるはずです。しかし、そのような上級語彙を手に入れたとしても、使える場面はそう多くありません。親しい友人との会話に組み込むのは不自然ですし、嫌味な上司が集まった社内会議で口にするのも難しいでしょう。あるとすれば、知識人ぶって大衆向けに講演をする場合くらいですが、我々一般人にそんな機会が訪れるとは思えません。

日本人が学ぶ英語においても、同じことが言えます。icing on the cake や the last straw なんてイディオム、覚えたところで喉を通ることは生涯ないでしょう。意味を知っているだけで十分上級者です。

というわけで、「仕上げ」の英語表現のうち、意味を思いだせれば上出来、使える必要なんてさらさらない代物をいくつか挙げてみます。

【リスト】「仕上げ」の英語表現

1. finishing touch

2. icing on the cake

3. cherry on the cake

4. cherry on the top (of the sundae)

5. last straw

6. knockout punch

7. coup de grâce

一つずつ見ていきましょう。

1. finishing touch

訳は「最後の仕上げ」です。

Google 翻訳に入れると、「画竜点睛」と出てきます。この四字熟語は、竜の絵を完成させるために最後に瞳を入れたところ、竜が天に昇って消えてしまったという、故事成語の中でもとりわけ現実味のないフィクションに基づいています。通例では「画竜点睛を欠く」のように、未完成なものに対して用いることが多いのが finishing touch との違いでしょうか。珍しく粋な和訳を見せてくれた Google 翻訳ですが、その用法の違いまでは頭が回らなかったようです。

2. icing on the cake

良い状況をさらに素晴らしくすることを表すフレーズです。「花を添えるもの」のイメージですね。

アイシングとは、お菓子のデコレーションに使われる甘いペーストを指します。クッキーにかけられているカラフルなあいつです。アメリカでは frosting と呼ばれることが多いようです。

ところで、アイシングクッキーは頻繁に目にしますが、アイシングケーキとは一体何者なのでしょう。ショートケーキの真っ白な甘いホイップの上にさらに甘いペーストをかけてしまえば、甘味が渋滞して途中で飽きてしまいそうです。少し酸味のある真っ赤な果実を加えてあげる方が、よっぽど美味しくいただけるでしょう。

3. cherry on the cake

さくらんぼケーキです。アイシングケーキのくどい甘さに嫌気がさした人が考えたのでしょうか。

とはいえ、ケーキの上にあるのがなぜさくらんぼなのか、というのは疑問です。彼らは可愛らしい見た目をしていますが、その中には毒入りの大きな種を含んでいます。多量に摂取しない限り身体に影響はないようですが、お祝い事で出されるケーキに毒が仕込まれているのを、不快に感じる人もいるかもしれません。やはりケーキには、同じ赤い果実でも、大きくて種が小さく毒のない苺が最適でしょう。

4. cherry on top (of the sundae)

またさくらんぼですが、今回はサンデーに載せられています。

サンデーの発祥はアメリカですが、その具体的な地域については様々な説があるようです。Wikipediaには、全米各地の自治体が、このパフェと呼べばいいデザートの発祥地の称号を欲していることが記されています。

sundae という名前は Sunday「日曜日」から変化したと言われていますが、それぞれの地域で主張されている説はどれも曖昧で説得力がありません。

「元々日曜日のみ発売していたものを他の曜日にも売り出したから」

「キリスト教の安息日と同じ名前であることを嫌う信者がいたから」

あたりはまだまともですが、中には

「セールスマンが綴りを間違えたから」

なんてものもあります。どこに曜日の綴りを間違えるネイティブがいるのでしょうか。

5. last straw

今回の straw はストローではなく「藁(わら)」で、和訳は「我慢の限界」です。相手の堪忍袋の緒を切ることを「仕上げ」の類語として扱うのは少々加虐的な感じがしますが、このフレーズを one of the synonyms として出してきたのは chatGPT です。人類のご機嫌を取るこのAIの本質は、狂気的なサイコパスなのかもしれません。

ところで、語源をたどるとこの「最後の藁」はラクダの背骨を折る原因となるものを指しており、もとは以下のことわざの一部分を抜き出したもののようです。

 “It is the last straw that breaks the camel’s back.”

たとえ僅かでも度を越せば大事になる

意地悪な質問でAIを困らせてばかりいたら、いつか返り討ちにあうでしょう。

6. knockout punch

そのまま「ノックアウトパンチ」です。きちんと日本語にするなら「決め手」「猛烈な一撃」でしょうか。前回の pull no punches や straight from the shoulder と同じく、由来はボクシングです。

ところで、プロボクサーのパンチはどの程度の強さなのでしょうか。彼らの本気の一撃を受けたことがある一般人はそうそういないので想像がつきませんが、例えばヘビー級のマイク・タイソンのパンチ力は、数値にすると 1,600J ほどだと推定されています。これは22口径のピストルを持った13人から同時に撃たれるくらいの衝撃だそうです。防弾チョッキを着ていても安全ではないでしょう。決してプロボクサーを怒らせてはいけません。

7. coup de grâce

フランス語由来で、意味は「慈悲の一撃」です。致命傷を負っている人を苦しませずに一撃で殺してあげるイメージです。

スポーツで勝利を確定的にする1点や1打に対して使われるほか、自虐的な意味を込めて使うこともあるようです。Oxford Learner’s Dictionaries には次のような例文が載せられています。

 “My disastrous exam results dealt the coup de grâce to my university career.”

とどめの一撃を喰らって人生を台無しにしないためにも、毎日勉強を続けたいものです。

まとめ

いかがでしたか。「仕上げ」と呼ぶべきではないフレーズも混ざっていた気がしますが、見なかったことにしましょう。使うことはないので。たぶん。

 

最後に、記事後半のポイントを3点にまとめてみました。

① さくらんぼケーキは毒入り

② chatGPTの本質はサイコパス

③ マイク・タイソンは暗殺者13人と等価

自分の身は自分で守るのが大事です。

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参考Webサイト

Word-Wise Web「画竜(がりょう)点睛(てんせい)」
(
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/kotowaza21)

Essentially Sports “What Was Mike Tyson’s Hardest Punch?”
(
https://www.essentiallysports.com/boxing-news-what-was-mike-tysons-hardest-punch/)

Merriam-Webster (https://www.merriam-webster.com/)

Cambridge Dictionary (https://dictionary.cambridge.org/)

Oxford Learner’s Dictionaries (https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/)

Collins Dictionary (https://www.collinsdictionary.com/)

The Free Dictionary (https://idioms.thefreedictionary.com/)

Wikitionary (https://en.wiktionary.org/)

Grammarist.com (https://grammarist.com/)

Wikipedia (https://en.wikipedia.org/)

英辞郎 on the Web (https://eow.alc.co.jp/)

Weblio英和辞典 (https://ejje.weblio.jp/)

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